2025.09.12(Fri)ブログ
シシバラク ~ 食文化の地図を広げて ~
〜食文化の地図を広げて〜
9月はシシバラクレッスンを2回開催予定で、先日、第1回が終わりました。
シシバラクは、小麦粉の生地で肉種を包んだ、中東の主にレバント地方(レバノン、シリア、パレスチナ、ヨルダンのあたり)の料理です。
「これに似た料理を何かご存知ですか?」との問いに、皆さんから「餃子!」の声。それからチベットの「モモ」、イタリアの「トルテッリーニ」、ロシアの「ペリメニ」、と次々に名前があがります。トルコの「マントゥ」もよく似た料理です。
シシバラクは、温かいヨーグルトソースで煮込むという点が特徴的。さらに、家庭ではごはんを添えることもあり、日本人にとってはかなりエキゾチックな料理かもしれません。でも、とても美味しいんですよ。
こうした詰め物料理の原型は、古代ペルシャや中央アジアに見られます。イスラム帝国の拡大と交易路の発展により、東西へと伝播し、その土地土地の諸条件に合わせて独自な料理へと発展していったわけです。
特に、アラブ・オスマン文化がイタリアやバルカン半島に影響を与えたことで、ラビオリやトルテッリーニのような料理が発展したと考えられています。つまり、ヨーロッパから中東へ、ではなく、中東からヨーロッパへ、という流れが歴史的に正確。
中東は文明の発祥の地であり、調理技術やスパイスの使用、保存法などにおいて非常に高度な知識体系を持っていました。近代以降の政治的・経済的序列が、誤った文化的優劣のイメージを生む、ということが往々にしてありますが、食文化に関してもそうですね。
私の中東料理教室では、そういったことをお伝えするのも重要な役割と考えています。